アフターレイン
 ちなみに親父は泣いていた。

 ちゃんと治るものらしいって説明しても「だってマールがあ」のエンドレス。



 あれで本当に四十歳を超えたおっさんなんだろうか。



 中身めっちゃ三歳児なんだけど。

 むしろ幼児以下なんだけど。



「だからさっきからバイト情報誌ばっか夢中になって読んでる訳?」

「そんな感じ」

「くっはー、偉いね」



 俺には無理だわ。と言いながら、タマは二つ目のパンの袋をバリッと破っていた。



「だって仕方なくね? 多少面倒くさくてもさ、拾ったのは俺だし」

「んー、久志は何気に優しいよな。モラルのない人間だったら病気が判明したその時点で捨てるんだろうけどー」



 だらしなく語尾を延ばすタマ。

 アホみたいに大口を開けて〝シュガー入りいちごジャムバターパン〟にかじり付いている。



 何か濃いそうだな。そのパン。
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