アフターレイン
離せ、嫌だ、いいから離せ、嫌だ、などとエンドレスに続く必死の攻防を繰り広げる。

いい加減突き飛ばしてやろうかと考え始めた頃、家の奥からぬっと人影が出て来た。



「…やめなよ父さん、恥ずかしい。アニキ嫌がってるじゃん」



力一杯俺にしがみつく親父をひっぺがしてくれたのは、直己。年子の弟だ。



こいつは昔から頭が良いから俺とは違う高校だけど、今年一年生。

うざったそうに黒い髪の毛を掻き上げながら溜め息を吐いている。



「はー、サンキュ直己(ナオキ)」



素直に感謝の言葉を述べると、別に、と素っ気ない答えが返ってきた。



直己とは顔がそっくりだと良く言われるが、別にそんなことはないと俺は思っている。

背はあんまり変わらないけど、直己の方が顔が端正だし、モテるし。



でもって直己の方がクールだ。

平たく言ってしまえば鬼畜。冷酷。



今だって親父に、縮み上がってしまいそうな冷たい視線を送っている。

しかし口元は笑顔だ。

我が弟ながら、恐ろしい。
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