黄色い線の内側までお下がりください
ついに昨日、決定的な言葉を耳にしてしまったということだ。
「富多子(ふたこ)を仲間はずれにして、今後の試合にも出さないことにしようって部員全員が話してた」
「富多子ちゃんはそれを聞いて何か言ったの?」
「言えないよ。だって部室の外で聞いちゃったんだもん。怖くて、何も聞けないし」
「なんでそうなったか、覚えは無いわけ?」
「・・・」
「で、今この時間にいるってことは、今日は部活は休んだってことだ?」
「そう。行けなくて。だってもうどうしたらいいのか分かんないし。どうしよう。これからどうしたらいいんだろう。私何かした? ぜんぜん分からない」
顔を両手で覆い、うわっと泣き出した富多子にあざみは骨のように白いハンカチを差し出した。
子供の頃から続けているし、テニスが好きだから辞めたくない。
でも、こんな状態じゃ怖くて部活なんて行けないし、学校にだって行きたくないと言った。