黄色い線の内側までお下がりください
【終末】

 清めの効果があるという塩と水を家中に置いた。

 魔除けの札を見えるところに貼った。

 出歩くときには必ず数珠をして塩を持ち歩くようにした。



 富多子と大梯は肩を寄せあって生活するようになり、バイトも遅くても20時には終わらせて21時には家にいるようにした。


 どこに行くにも二人一緒、かたときも離れることはなかった。


 お互いにお互いを守る。そんなかんじだ。



 交通手段もバスを使うようになり、電車に乗ることはほとんどなくなった。


 札のおかげか、家で見た黒い影も見ることがなくなり、家にいたら大丈夫なんだと思うと安心した。



「富多子ちゃん、ずっこここにいるのもあまり良いとは言えないから、この際どこか、そうだな、大学の近くとかに引っ越さない?」


「引っ越す? でもお金とか親とか......」


「引っ越しのお金は心配しなくて大丈夫だよ。そうしたらもう電車も使わなくてすむし」



 電車を使わなくてすむのはありがたい。


 この恐怖と不安から解放されるんだから、こんなに嬉しいことはない。


 親だって言えば分かってくれると思う。


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