黄色い線の内側までお下がりください
これ、タイラだ。絶対これタイラのことだ。
という桜の直感は当たっているが、まだこの時点では確証は持てなかった。証拠がつかめないし憶測でそうは考えたくなかったということもある。
「私、行ってくる」
コーヒーを一気に飲み干すと、
止める店長の手をかわし、桜は店を飛び出した。後ろで店長が何か叫んでいるが、桜の耳には雑音にしか聞こえない。
熱い空気がそこらじゅうに漂い、風の流れに乗って自由に泳いでいる。
道路の片隅に無残に転がされた黒猫の残骸のようなものに桜はびくりとして足を止める。
遠くからじゃ分からない。恐る恐る近づき確認するが、
それはただの黒い服のかたまりだった。
よかった。
胸を撫で下ろす桜はそのまま向かう。
例の駅へと。
みんなが死んで行く、あの駅へと走った。