黄色い線の内側までお下がりください
「来るなら来てみろっていうのよ。ふざけるな! なんならもう一回同じ目にあわせてやる」
こぶしを握りしめながらホームのぎりぎりのところまで歩き、下を見た。
タイラの残した何かが見つかるかと思ったが、そこには何もなかった。
きっと長いトングのようなもので、機械的にタイラの肉片はゴミ袋に入れられて業者の元へ運ばれたのだろう。
でも、ここにはタイラと用賀の血肉がかすかにでも残っているはずだ。
同じ場所だったら、混ざっているかもしれない。
その拾われなかった血肉は、この土の中に吸収されて、もしかしたら体液や脂肪などは溶け込んで染みついているかもしれない。
小さくてもいい、ここにいた証拠が何かが見つかるかも知れないと思い、目を懲らしてよく見た。
しかし、やはり何も見つけることは出来なかった。
後ろでにこやかに笑って立っている女が二人いることになど、
線路に気を取られていた桜は気付くことがなかった。