黄色い線の内側までお下がりください
「だって」
ちらりと自分の後ろを振り返る。
桜も目を動かすが、そこには誰もいない。
「なに?」
「・・・あ、やっぱり」
「なんなの?」
「ここには来ない方がいいと思いま・・・ひゃっ」
「どうしたの?」
横に1、2歩飛ばされる格好になった女子は、なんでもありませんと下を向いた。
「だれなのあんた? ここで何があったか知ってるなら教えて。確かにタイラは私の友人で、ここで死んだのがタイラなら、どうしてそうなったのか教えて欲しい。お願い」
「・・・あ・・・そうですかそこまでは?・・・はい、私は・・・富多子です。ええと・・・」
桜じゃない方、誰もいない方を見て話し始める態度に君の悪さを感じるも、タイラとの経緯を少しずつ話し始めた富多子に桜の顔が歪んだ。
「じゃぁ、やっぱり落ちたのは・・・タイラなんだ」
「・・・はい」
線路に目を向ける。
枕木の間には砂利と紙くずが落ちている以外他には何も見当たらない。
何も無い。