黄色い線の内側までお下がりください
黄色いような、オレンジ色のような、少し粒の混じったべっとりとした液体は好ましくない臭いがした。
べっとりとするそれは、人間の脂肪のようなもので、ぐっしゃりと手に張り付いていた。
悲鳴も出ない。
気付いた時にはベッドと反対側の壁にいた。
壁一面にはカラーボックスを置いて本棚代わりにしている。
そこに背中を向けてベッドの方を向いた。
ベッドの上には、誰もいない。
もう一度手を確認する。
汗だ。
自分の汗で手が光っている。
濡れたはずの手をずぼんの腿部分に何回も擦りつけた。
変なことを考えてばかりいたからこんな錯覚のようなことが起きたのか?
肩が大きく上下している。
空気を肺に送り込もうと肺が一生懸命働いている。
しばらくそこに立っていても何も起こらない。何も無い部屋に少し安心し、乱れた呼吸は少しだけ戻り始めた。