黄色い線の内側までお下がりください
時計を見ると、4時08分。
いつもこの時間にこうなる。
目を閉じてエアコンの風を感じ、時間が過ぎ去るのを待つしかない。それ以外に方法はないから。
コトリと音を立てて何かが倒れた音がして飛び起き、音の主を目で捜し、びくりと跳ねた心臓を抑えた。
テレビの後ろに何かが落ちたらしい。
恐る恐るベッドから出てテレビを横に少しずらすと、
赤いハート形の小物入れが一つ、蓋が半分開いた状態で見つかった。
「これってあのときのやつ...だよね」
手に取り、中身を見て昔のことがスライドショーのように頭に入ってきた。
体から力が脱力した。
「......これだ。これのことだったんだ」
蓋をしっかり閉じると両手でぎゅっと潰すが、びくともしない。
「そんなに返してほしけりゃ返しに行ってやるわよ」
腹立たしさと気持ち悪さが体中を覆う。
音を立ててテーブルの上にその小物入れを叩きつけ、睨みつけた。
赤い皮でできている小物入れには埃が白い被っていた。