黄色い線の内側までお下がりください

***



 黄色い線の裏にはね、御札がびっしりと貼ってある。


 危ないからこれ以上前に来ないでって意味じゃない。


 私たちがホーム上に上がって来ないようにするためのもの。


 ......私は別として。


 警笛を鳴らす電車の運転手がいるのは、彼らには私たちが見えているから。


 あの警笛は、あなたたちのために鳴らしているんじゃない。




 あれは、私たちに警告しているだけ。






 さて、片付けなきゃならない人がまだ一人残ってる。




 あいつはどこへ行った? 

 ...まぁいいや。

 味をしめているからきっとまたここに来る。

 好奇心には勝てないだろう。

 それを私は待たなければならないけれど、

 でも自信がある。私のタイムリミットまでにあいつはまたここに現れる。

 それを私は絶対に見逃さない。





 警笛が鳴ったら思い出して欲しい。

 そこには私たちがいる。

 あなたをこっちに引きずり込むために、

 機会を狙ってる。

 こっちに来たければ紫陽花を探して。

 そして私を呼んで。







 そのときは他の誰かじゃなく、私が迎えに行くから。


 心配しないで。


 大丈夫。


 
 苦しいだけで、



 別に大したことじゃない。




【完】

< 89 / 163 >

この作品をシェア

pagetop