黄色い線の内側までお下がりください
あざみはいつも通り、無表情で線路の真ん中に立っている。
白目をむいて口を半開きにしてよだらを垂らしながら、ホーム上の人々をじっと眺めていた。
時折自分から発せられる死臭に顔をしかめる人々を見ては、満足そうな笑みを浮かべ、真っ赤な舌を顎まで垂れ出して、口元を一周舐め回した。
足元には紫色の紫陽花が咲き乱れ、つたはあざみの膝あたりまできつく巻き付いていた。
風になびかない髪の毛はじっとりと濡れ黒々と光っている。それはぱっくり割れた頭から流れ出た血が凝固したものだろう。
夕方4時になるとどこからともなく現れて、終電が終わるとどこかへ消えていく。
相変わらず無数の亡霊たちは電車がホームに入るたびに手を伸ばし、ホームを歩いている人々の足首を掴もうとしている。
ひとりでも多く、こちらの世界に引きずり込もうと、この世への未練、怨み、妬み、嫉妬を隠すことなく全面に押し出していた。