*。・゜例え記憶をなくしても゜・。*【番外編追加中&リク受付中】

みんなとの別れの日、あたしは一人で屯所を抜け出していた。

誰にも分からないように、森の奥深くへ進む。

そこへついた瞬間、パァーと辺りが明るくなって、見たことのある扉が現れた。

「…時空の、扉。」

ドンっと聳え立つその扉は、あたしの目の前に立っている。

入ろうと手を伸ばすけど、その手は、誰かの手によって阻まれてしまった。

後ろからぎゅっと抱きしめられている。

振り返らなくてもわかる。

「…沖田さん…」

この温もりは、沖田さんだ。

「はぁ……はぁ…」

息切れしてるってことは…必死になって探してくれたのかな?

「…ど…ゆうことですか。
未来に…帰るって …」

…土方さん、話すなって言ったのに。

「…あたしは、未来の人間だから、帰らなきゃいけない。
ただ、それだけのことです。」

「…けど…」

沖田さんは情けない声を出す。

そんな声に後ろ髪引かれながらも言葉を発する。

「……沖田さん、これだけは覚えていてもらえますか?」

そう言って扉を開け、沖田さんの方を振り返り、体重を後ろにかける。

「あたしは、記憶がなくなったとしても、貴方を忘れない。」

ーだって、心が貴方を覚えているから。

「そしてきっと思い出してみせます。」

ーいくら時間がかかったとしても、

「きっと…貴方を見つける。」

ー絶対に見つけるから。

「だから…その時まで待っててください」

ーだからここで笑って待ってて。

最後に見た沖田さんは、始めてあたしの前で涙を流していた。

でもそれをかき消すかのように沖田さんは綺麗に笑ってあたしを見ていた。

「…はい、待ってます。ずーっと」

扉に吸い込まれて行く中、そんな声が遠くで聞こえた。

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