*。・゜例え記憶をなくしても゜・。*【番外編追加中&リク受付中】
「………」

何も喋ろうとしない斎藤さんをチラリと見る。

何か考え事をしているみたいだ。

斎藤さんに何を言われるのか怖くて仕方がなかった。

ー嘘つき。

そんな言葉を人から言われるのは思ったより辛いことで、一日にしてあたしの心は酷く病んでいた。

「ーそうか。」

たった一言、斎藤さんはそう言った。

「え……嘘つきって言わないんですか?」

思ったままのことを言う。

すると目と目を合わせて言った。

「お前は嘘をついていないと言った。
なのになぜ嘘つきと疑う必要がある?
それに・・・お前は今泣かなかった。
我慢していたのだろう?
その年で我慢するのはきついだろう。
お前は大した男だ」

「っ!」

その一言で、“冷血な男”という斎藤さんの印象はとてもいいものへと変わった。

あたしの話を信じてくれただけじゃなく、ほめてくれた。

それがとてもうれしかった。

「…ありがとうございますっ!」

それが、あたしがここにきて初めて笑った瞬間だった。
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