カルマの坂【短編】

序章：少年

｢ハァ…ハァ…｣
少年は全力で走っていた。
年は１５・６といったところだろうか。
スラリと長い手足、整った顔立ち、濃紺の瞳…、いわゆる美少年だ。
しかし、服はボロボロで、足は裸足、青みがかった黒い髪もボサボサだった。

｢待ちやがれ!!｣
後ろから少年を追ってきた小太りの男が大声で叫んでいる。
｢今日という今日は許さねぇぞ！｣

｢捕まえれるもんなら捕まえてみろよ。｣
少年は嘲笑うかのように、小太りの男に向かって手に持っていた物をプラプラと見せつけている。
｢ま、オレを捕まえるんなら、まずダイエットしなきゃな〜。オッサン♪｣
｢なんだと小僧！｣
小太りの男はカンカンに怒っている。
｢だ〜か〜ら〜、ダイエットしろっつってんの！じゃな☆｣
少年はそれを気にも止めず、手をひらひらとふって、風のような速さで走り去っていった。

｢ゼイ…ゼイ…ちくしょう…。また逃げやがった。これじゃ商売あがったりだ!!｣
小太りの男はあらく息をしながら、来た道を戻っていった。