カルマの坂【短編】
4章:少女
金持ちの家には兵士が50人はいただろうか。
しかし、少年はもう、怒りと憎しみで我を忘れ、ただただ剣を振るった。
金持ちを殺し、少女を助け出すことしか頭になかった。
少年は、兵士に多少切られても、構わず剣を振るい続けた。

そして、ほとんどの兵士を殺し終えた少年は返り血に濡れ、思考回路もぶっ飛んでいた。
少年はもはや、痛みすら感じていなかった。
廊下にはおびただしい数の兵士の死体が、折り重なって倒れていた。

「待ってろよ…。助けてやるからな……」
呟きながら、少年は虚ろな目で兵士の死体を踏み越え、ゆっくりと血まみれの廊下を進んでゆく。

少年は目についた扉を片っ端から開けていった。
そして、金持ちを見つけた…。

バンッ!
少年は勢いよく扉を開けた。
そこには太った中年の男がいた。
男は派手な寝間着に身を包み、怯えた目で少年を見ていた。
「お前がこの家の主か…?」
「まっ待ってくれ。
金ならいくらでも払う。
いくら欲しいのだ、ん?
た、頼む。
殺さないでくれ〜!」
「…もう一度聞く、
お前がこの家の主か?」
少年はギラついた目で、命乞いをしてくる金持ちを睨み、静かな声で聞いた。
「そ、そうだ。
私がこの家の主だ。
頼む!どうか命だけは…」
「うるせぇよ…」
ドンッ
少年は金持ちの話を遮り、剣を振った。
鈍い感覚が手に広がる。
それと同時に、金持ちの首が飛んだ。

(あの子は…)
少年にはもう、あの少女のことしか頭になかった。
そして、少年はまた、ひたすら扉を開け続けた。
扉を開けては少女を探し、兵士がいれば殺す。
これを30回程繰り返した時だった。
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