「約束」涙の君を【完】
花火
祥太が夏休みに入った。
毎日会いに来てくれて、
毎日一緒に過ごせる夏休みが、
ずっと続けばいいのに……なんて思ってしまっていた。
夏休みも後半に入ったある日の帰り際、
庭先まで見送りに出たら、
「あのさ……」と、自転車のハンドルを持ったまま、
祥太が話し始めた。
「8月29日に毎年隣の市でやっている花火大会があるんだけど、
優衣も行く?」
花火大会って、6年の時に川で見たやつかな……
「夏祭りみたいな感じだから、高校の奴とか、近所の人とかいっぱいいるけど……」
高校……
近所………
「大丈夫だよ、俺も一緒にいるから」
祥太にそう言われても、正直まだ人ごみが…人目が怖かった。
でも、いつまでも人目を気にしていられない。
2学期から高校に行くんだから。
私は、強くならなくちゃいけない。
そう思って、深く頷いた。
祥太はそんな私を見て、優しく微笑んだ。
「今度はでっかい花火見ような。
じゃ、また明日な」
祥太は、自転車に乗って走り出した。
祥太もあの時見た小さな花火を、
覚えていてくれたんだ……
今度は大きな花火……
不安な気持ちもあるけど、楽しみな気持ちの方が、
少し大きくなったような気がした。