「約束」涙の君を【完】
男の子は、ジロッと私を睨んだ。
「私は、おじいちゃんに入れてもらうから」
私がぐっと傘をさらに差し出しても、
男の子は傘を受け取ろうとしなかった。
「明日、返しに来て。
それからさ、
明日...一緒に遊ぼうよ」
そう言うと、男の子の表情が一瞬緩んだ。
でもまた口をへの字にして、バッと勢い良く傘を奪うと、
何も言わずに走って行ってしまった。
「じいちゃんなんか、悪いこと言ったか?」
え。おじいちゃん。
状況をなんにも知らない私にも、嫌味ったらしく聞こえたけど。
「明日、謝っておくよ。
でも、来るかな...あの子」
そういえば、名前も聞かなかった。