「約束」涙の君を【完】
祥太は自転車に乗り、ペダルをこぎ出した。
私も自転車に乗り、
そしてペダルに足を乗せた時、
「いい気になってんなよ……」って陽菜の小さな声がした。
バッと陽菜を見ると、
私のことを睨みつけていた。
怖い……と思い目をそらして、
急いで祥太の後を追った。
正門を抜け、橋を渡ると、
私の家は右だけど、
祥太は左に曲がった。
しばらく川沿いを走って、また、橋を渡ると、
田畑の中に新しい家がポツンと見えた。
そこの玄関前で祥太が自転車を止めると、
玄関から太一くんが飛び出してきた。
「かっちゃんちに遊びに行ってくるから!」
太一くんは自転車を玄関脇から引っ張り出した。
「気をつけていけよ」
「わかってるよ!」
太一くんは自転車に乗って、走って行ってしまった。
祥太はそのまま玄関の中にどんどん入って行ってしまって、
私は自転車を止めて、
玄関前でどうしようどうしようとオロオロしていたら、
「入れば」と、
祥太がまた玄関から顔を出した。
私はバッグを胸に抱えて、小さく頭を下げてから中に入ると、
「誰もいないから、気にしなくていいよ」
って、祥太は階段を上って行ってしまった。