「約束」涙の君を【完】
屋上に行くと、私の前に5人並んで睨んできた。
「水沢さんって結城くんのなんなの?」
トイレに行った時、携帯も何も荷物全部教室に置いてきてしまったから、
答える手段が何もなかった。
「あ、そうだった。しゃべれないんだったよね。
ねぇ、本当にしゃべれないの?」
……はぁ?
「本当はしゃべれるんじゃないの?
そうやって、悲劇のヒロインぶって、
結城くんの気を引いているだけなんじゃないの?」
そんな……ひどい……
「まぁ、確かに悲劇だよね。
お母さんが、お兄さんを殺して、
一緒に車で海に突っ込んだんでしょ?」
何が、言いたいんだろう……この人。
「よくそんな家族の娘なのに、
のこのこと、高校に来れたね。
なに、それとも、こんな田舎だから、
東京の事件はここではごまかせるとでも思ったの?」
5人の女子たちが笑い出した。
「あんた自分のことちゃんとわかってんの?
そんな奴が、結城くんみたいに、
お父さんが有名大学の教授っていう人と、
付き合えるとでも思ってんの?」