「約束」涙の君を【完】
確かに、陽菜の言うとおりだと、
思ってしまい、
下を向いた。
「自分の立場を考えなさいよ。
かわいそうね……水沢さんて」
……かわいそう?
「本当にかわいそう。
そうやって一生家族のことで苦しむんだもんね。
そんな人生、私だったら恥ずかしくて外に出られない。
いっそのこと、死んでしまいたいって思うけど、
水沢さんて、図々しいっていうか、図太いのね。
水沢さんのお母さん、息子を殺せるんだから、娘のことも殺してくれればよかったのにね。
一緒に連れてってくれればよかったのに」
その言葉を聞いて、
奥野の言葉を思い出した。
それからもずっと私を罵り続けて、
それが、陽菜なのか、奥野なのか、
わからなくなってきてしまった。
あの日のこと、
あの頃のことが、
鮮明に思い出されてしまい、
心臓が苦しいほど早くなり、
だんだんと息苦しくなってきてしまった。
はぁ……はぁ………っ……
「ちょっと、聞いてんの!!」
パシッと頬を平手打ちされて、
陽菜が奥野に見えた瞬間、
私は、あの日と同じように、
陽菜を突き飛ばした。
「っ‼………はぁ……‼っ……‼」
声にならない言葉を叫んだ。
『私だって生きたくて生きているんじゃない』って、
あの時は言ったけど、
今は、
『私だって、生きて行きたいんだ』って叫びたかった。
「何すんのよ‼」
陽菜が立ち上がると、私は立っていられなくて、
コンクリートの床にしゃがみこんだ。
苦しい……息が……苦しい……
「立ちなさいよ!」
他の女子たちが私を立たせようと腕を掴んだ。
「なんか、やばくない?」
私の様子があまりにもおかしいのか、
一人の女子が異変に気づいた。
「うるさい!」
「ねぇ、陽菜、やばいって、なんか苦しそうだよ、やばいって」
頭がくらくらして、
目の前がチカチカしてきてしまった。
その時、屋上のドアがバンと開き、
祥太が見えた。
祥太は血相を変えてこっちに向かって、
ダッシュしてきた。
周りの女子が、私から手を離した瞬間、
倒れがかった私を祥太が抱きとめてくれた。