「約束」涙の君を【完】
それからまたタオルを口元に当ててくれて、
私が落ち着くのをずっと待ってくれた。
しばらくすると、呼吸も楽になってきて、
頭の痛みもやわらいできた。
「落ち着いてきたか?」
私はタオルを外して頷き、
祥太にもたれていた体を起こした。
「もう少し休んでから帰るか」
そう言ってまた私を抱き寄せてくれた。
発作が落ち着いてからも、
祥太は、ずっと私を抱き寄せてくれていた。
その間、祥太は何もしゃべらず、ずっと黙っていた。
もう、大丈夫だと思って、
私がゆっくりと立ち上がろうとしたら、
祥太が腕を掴んだ。
「歩けるか?」
少しクラクラしたけど、私は頷いて、祥太の手を握った。
そして、自分たちの教室に向かって、
荷物を取り、
駐輪場へとゆっくり歩いた。
「優衣は、自転車置いていきな。
俺が送って行くから。
明日の朝は、迎えに行くよ」
そんな……朝、弱いのに……
私は首を振ると、頭が痛んで思わずこめかみを抑えた。
「無理すんなって。
ほら、行くぞ」
祥太は自転車の後ろをポンポンと叩いた。
自分でもこのまま自転車をこいで帰るのは無理だと思って、
祥太の後ろに乗った。
そして、祥太に腕を掴まれる前に、
私から祥太のお腹に腕を回した。
ゆっくりと自転車が動きだし、
正門を抜け、橋を渡ると、
自転車は右に曲がった。
祥太の背中から見た空は、
オレンジ色に染まっていた。
辛いことをたくさん言われたけど、
祥太の言葉で救われた……
祥太がいなかったら私……
どうなっていたんだろう……
ぎゅっと背中に頬を寄せて、そんなことを考えていた。