「約束」涙の君を【完】



祥太は、急いで自転車の向きを変えて、


こっちに戻ってきた。




そして、私の横に自転車を停めると、



私の前に立った。


「何、言ってんだよ」




えっ……?






「何、先に言ってんだよ」




先に?……え?



よくわからないでいたら、腕を引っ張られて、


ぎゅっと抱きしめられた。





「ずっと声が出るの待ってた。





声が出たら、告白しようって決めてたんだ。




まさか、先に言われると思ってなかった」


待ってた……



祥太は、声が出るのを待っていてくれていたんだ……




「好きだよ……優衣。



ずっと……


ずっと好きだった」





祥太………






「私ね……う……



嬉しかった……の。



みんなの……前で、て…手を繋いでくれたことも……



『俺の』って、言って……くれたことも。



き……キスで薬を飲ませてくれたことも、




全部……嬉しかったの……」





ちょっと言葉に詰まってしまったけど、



やっと伝えることができた。


やっと声で、



気持ちを伝えることができた……




そう思っていたら、

祥太が私の肩を押して、私の顔を覗き込んできた。





「ずっと優衣の声を聞いていたいんだけど……」




だけど……?



私が首を傾げたら、



顎をそっと持ち上げられて、


私の唇だけを見つめている祥太の顔が、

近づいてきた。



ぎゅっと目を閉じると、


柔らかく唇を塞がれ、



薬の時と違って、


ちょっと、激しくて……




祥太の制服のワイシャツを掴んで、


長いキスを受け止めた。




< 147 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop