「約束」涙の君を【完】
祥太は、急いで自転車の向きを変えて、
こっちに戻ってきた。
そして、私の横に自転車を停めると、
私の前に立った。
「何、言ってんだよ」
えっ……?
「何、先に言ってんだよ」
先に?……え?
よくわからないでいたら、腕を引っ張られて、
ぎゅっと抱きしめられた。
「ずっと声が出るの待ってた。
声が出たら、告白しようって決めてたんだ。
まさか、先に言われると思ってなかった」
待ってた……
祥太は、声が出るのを待っていてくれていたんだ……
「好きだよ……優衣。
ずっと……
ずっと好きだった」
祥太………
「私ね……う……
嬉しかった……の。
みんなの……前で、て…手を繋いでくれたことも……
『俺の』って、言って……くれたことも。
き……キスで薬を飲ませてくれたことも、
全部……嬉しかったの……」
ちょっと言葉に詰まってしまったけど、
やっと伝えることができた。
やっと声で、
気持ちを伝えることができた……
そう思っていたら、
祥太が私の肩を押して、私の顔を覗き込んできた。
「ずっと優衣の声を聞いていたいんだけど……」
だけど……?
私が首を傾げたら、
顎をそっと持ち上げられて、
私の唇だけを見つめている祥太の顔が、
近づいてきた。
ぎゅっと目を閉じると、
柔らかく唇を塞がれ、
薬の時と違って、
ちょっと、激しくて……
祥太の制服のワイシャツを掴んで、
長いキスを受け止めた。