「約束」涙の君を【完】
ふっと唇が解放されて、ぎゅっと抱きしめられた。
「し…祥太……」
「ん?」
「いっぱい、
優しくしてくれて、
ありがとう……」
祥太は抱きしめながら、私の頭を撫でた。
「優しくしようと思って、やっていたわけではないよ」
えっ……
私は、祥太の胸から顔を上げた。
「ただ、好きだった」
まっすぐ見つめられて、
真剣な顔で言われたから、
胸がきゅんって……
真剣な顔をしていたかと思ったら、
急に、
目の前でかわいく笑い出したから、
きゅんきゅんって……
もう、どうしようもなく好きで、好きで、大好きで……
「祥太……私、どうしよう……」
「ん?」
祥太は首を傾げた。
「私……祥太の事が好きすぎて、
……どうしよう……」
祥太は一度大きな瞳をまん丸にしてから、
あははっと笑い出した。
そして、私の頭をポンポンと撫でて、
「何言ってんだよ…」って、
また目を細めて笑った。
「ばあちゃんとじいちゃんに『ただいま!』って元気な声で言ってやりな。
じゃあ……
また明日朝、迎えに来るから」
祥太は私の頭から手を離し、
また、自転車に乗った。
「朝、弱いのに……ごめんね」
祥太はハンドルを持って、
私の顔を覗き込んだ。
「起こしてよ、俺のこと。
6時半……やっぱ7時に、携帯に電話して」
電話……
「わかった。7時に……電話するね」
祥太はペダルに足を置いた。
「頼むな」
祥太は自転車をこぎ出した。