「約束」涙の君を【完】
「バケツ!」
...は?ばけつ?
バケツなんて、あった?
私は立ち上がって、周りをぐるっと見渡した。
男の子の荷物があるところには...これは飼育ケースだよな...
バケツ...
すると、川下の岸に、黄色いバケツが置いてあった。
「あれ?」
私がバケツを指差して聞くと、「そ!」と男の子は返事をした。
砂利でゴツゴツして歩きにくい川岸を歩いて、
バケツを覗くと、
飼育ケースの魚よりも大きめの魚が1匹。
...ちょっと気持ち悪い。
でも、勇気を出して両手で取っ手を持ち、
バケツの中を見ないように運んで、
男の子のそばの岸に置いた。
男の子は川岸まで来て、網の中の魚をバケツに入れた。
すると、バケツの中で、バシャバシャと、魚が一瞬暴れた。
「わああ!!」
びっくりして、一歩バケツから離れると、
足場が悪かったせいか、尻もちをついてしまった。
男の子は大きな目をまん丸にしたかと思ったら、
今度は、目を細めて笑い出した。
「何やってんだよ......」
初めて笑った……
下から見上げた男の子の笑顔が、
あまりにもかわいくて、
思わずじっと見つめてしまった。