「約束」涙の君を【完】
「大丈夫か?」
男の子は、私に手を伸ばすと、
一度引っ込めて、自分のタンクトップで手を拭いてから、
もう一度、手を差し出してきた。
私はその様子にクスッと笑ってしまって、
それから、ギュッと男の子の手を握った。
男の子に引っ張られて立ち上がると、
やっぱり私よりも少し背が小さかった。
「ねえ、何年生?」
男の子はまた、網を持った。
「6年」
「なんだ!同じじゃん!私も6年!
ねえ、名前は?」
男の子は、川に少し入って立ち止まった。
「結城祥太(ゆうき しょうた)」
そう言って、またザブザブと川の真ん中の方へ行ってしまった。
ちょっと!私の名前も聞いてくれてもいいのに...
私は、川の水を眺めて、
東京の川と全然違って綺麗なことを確認した。
……私も入ってみよう。
私はその場にしゃがんで靴下を脱ぎ、
靴の中に靴下を入れてから、立ち上がると、
....じゃりが痛くて歩けない。
「痛い、いったーい!!」
痛い痛い言いながら、川の中に入ると、
「つめたーーーーいい!!!」
祥太は、私のところまで戻ってきて、
私の足元を見た。
「持ってろ」
そう言って、私に網を持たせると、
自分のビーチサンダルを脱いで、
川の水で洗い出した。
そして「ん」と、私に差し出してきた。
「きたねーけど。
痛いよりましだろ」