「約束」涙の君を【完】
びしょびしょの黒いビーチサンダルを受け取ると、
祥太は私から網を奪い、また真ん中の方へと行ってしまった。
私は川に入ったまま、ビーチサンダルを履くと、
さっきまでの痛みが嘘のように、
ザブザブと歩きやすくなった。
「ねえ、祥太は痛くないの?」
祥太のそばまで行って顔を覗き込むと、
「痛くねーよ」
と、ムスっとした顔で答えた。
「怒ってます?」
さらに覗き込むと、
「怒ってねーって」
と、顔を背けた。
「私、藤井優衣(ふじい ゆい)。
優衣って呼んで」
「......」
......って無視か!!
「こら!無視すんなあ!」
私は、川の水をジャバジャバと祥太にかけた。
「うわ!やめろって!!
魚が逃げんだろ!!」
それでも、ジャバジャバとかけたら、
ムスっとしていた祥太が笑い出した。
....祥太の笑顔ってかわいい...
とても同じ6年だとは思えないぐらい、
幼く感じた。