「約束」涙の君を【完】
海に行ったあの日が、
誕生日だったなんて……
【俺は優衣と海に行きたいんだ】
【生きていて、
生きていてくれて
本当によかったって思っているよ】
【もう、優衣には祝ってもらったから、
だからもういいんだよ】
あの日、自分の誕生日だったのに、
お母さんが亡くなった日だったのに、
私の誕生日を祝ってくれて……
私は涙があふれてしまった。
「祥太を生んだ母親はね、
僕の教え子だったんだ。
大学3年生の時に、いきなり妊娠したから退学するって言ってきて、
とても優秀な子だったから、もったいないって引き止めた。
休学して、出産したらまた来ればいいといったんだけど、
家庭の事情もあって退学するしかなかった。
父親が誰か知らないけど、
ひとりで育てるって言い出して、
僕は心配で、いろいろと助けてあげていたんだ。
そしたら、好きになってしまって」
待って。
ということは……
祥太とお父さんは、血が繋がってないんだ。
「結婚しようって言ったんだ。
それから3人で暮らし始めたのは、
祥太が小学校1年生ぐらいの頃かな……
かわいくてね。
でもね、その頃仕事が忙しくて、海外とかにも行っていたから、
ひとりにしてしまうことが多かったんだ。
祥太のお母さんはとても心が弱い人でね……
僕がいないと、ダメになってしまうようになったんだ」