「約束」涙の君を【完】
太一くんがいなくなっちゃった時、
祥太も殴られたなって……
「お父さんみたいに、優しい強さを持った人になりたいって、
私に言ってました」
私はお父さんにそう伝えた。
「そうか……なんか嬉しいな。
でも、僕がそうなれたのは、
祥太のおかげなんだよ。
僕が好きになった人の子供だから……
優しくもなれたし、強くもなれた。
優衣ちゃん。
祥太はね、優衣ちゃんの気持ちが、
誰よりも理解できると思うんだ。
祥太も東京では、
母親の事を色々言われて辛い思いをした。
祥太も、家族のことでは、
いろんな複雑な思いを抱えているんだよ。
だから祥太は、優衣ちゃんを、
心から大切にしたいと思っているんだ。
なのに……
ごめんね……東京に行くことになってしまって。
二人を離れ離れにさせてしまって……」
お父さんはまたコーヒーを一口飲んだ。
「再婚した奥さんの仕事の関係で、
どうしても東京に……
これは、彼女にとってはチャンスでもあるから、
僕は、一緒に行ってサポートしてあげたいと思っているんだ。
もう、自分のせいで、
大切な人を失いたくないんだ」