「約束」涙の君を【完】
お父さんの話を聞いて、
その気持ちが痛いほど伝わってきて、
祥太と離れるのが辛いとか、
さみしいとか……
そんなこと、絶対に言っちゃいけないって思った。
祥太の生い立ちが、
そんな複雑だとは思わなかった。
大切な家族を失って、
大切な家族に育てられて……
私と同じで……なのに、
祥太は、あんなにも強くて……
私も、強くなりたい……ならなくちゃいけない。
「大丈夫です」
お父さんは「ん?」と驚いていた。
「東京に行っても、私の気持ちは、
絶対に……
絶対に変わりませんから。
今までいっぱい支えてくれて、
守ってくれたから……私……
祥太のために、強くなります」
強くなると言いながら、泣いていたら意味がないから、
言い切った後、ぎゅっと唇を噛み締めて、
涙を堪えた。
堪えた涙を流したのは、お父さんの方だった。
「祥太をこんなに好きになってくれる子ができて、
本当にあの時、祥太だけでも助かってよかった。
本当に……よかった……
ありがとう……優衣ちゃん」
お父さんは、立ち上がって、カウンターの向こうに行った。
「もうそろそろ起きるんじゃないかな……
見に行ってごらん」
お父さんはティッシュで目を抑えながら言った。
「はい……」
私は立ち上がって、また、
祥太の部屋へと階段を上った。