「約束」涙の君を【完】
おばあちゃんの家での暮らしが始まった。
おばあちゃんは、昔お母さんが使っていた部屋を片付けて、
私の部屋にしてくれた。
おばあちゃんの家にくる人に、いろいろと聞かれても、
答えられないのが辛くて、
ほとんどを自分の部屋で過ごしていた。
それでもおばあちゃんは、
「なんにも考えんな。
ゆーっくり、体治していけばいい」と、優しく笑って、
いつもそう声をかけてくれた。
おじいちゃんは、あれから何度か東京に行っていた。
いろいろと、高校の事とか手続きが大変なんだと思う。
おばあちゃんの家での暮らしは、
びくびくしないでトイレにいけること、
明日を不安にならないで眠れること、
3人でご飯を食べられる事、
それができることで、
少しずつ安心感を覚えていた。
「高校なんだが……」
おばあちゃんの家に来て一週間ほど経った日の夜、
夕ご飯を食べながらおじいちゃんが言った。
「優衣の東京の高校は、頭がいい学校みたいだから、
こっちの高校なら、どこでも受かると思うがな。
東高校の校長先生が、じいちゃん知り合いだから、
東高校はどうかと思うんだが。
家からも近いしな。
優衣のことを話したら、試験受けられるようにしてくれるっていうし、
祥太って覚えているか?
祥太も通ってんだ、東高校に。
知り合いが一人でもいた方が優衣も心強いと思ってな」