「約束」涙の君を【完】
祥太……
祥太と同じ高校に……
今の私で、祥太に会うの……
会えない。
もう、今の私は、昔の私じゃない。
祥太には、あの夏の日の記憶のままでいてほしい。
【高校を考えてくれてありがとう。
もう少し考えてみるね。】
おばあちゃんが買ってくれた自由帳にそう書いた。
「ゆっくり考えればいい。
大事なのは、優衣の体だ。
無理しなくていい」
おじいちゃんの言葉に、おばあちゃんが頷いた。
部屋に戻ると、
ポーチから緑色の石を取り出した。
祥太に会えないと言いながらも、
会いたいと思う自分もいることに、
気づいた。
でも、会ってどうするの?
お母さんがお兄ちゃんと無理心中したことを、
祥太はきっと噂で知っている。
私が話せないことは……?
会えば絶対にバレる。
無理じゃんそんなの。
そんなの、会えるわけないじゃん……
石をぎゅっと握ると、
また、
ポーチの中に石をしまった。