「約束」涙の君を【完】
え……祥太………
祥太は、ゆっくりとさらに上ってきて、
私よりも2段下で立ち止まった。
2段下にいるのに、
私と同じ目線に、
祥太の顔がある。
私よりも背が小さかったのに、
丸顔で短髪だったのに、
目の前にいる祥太は、
背が高く、
黒髪がふわふわと外はねしていて、
まるで別人のように、大人になってしまっていた。
祥太は学校のと思われるバッグを肩にかけていて、
両手をズボンのポケットに入れたまま、
首を傾げて私の顔を覗き込んできた。
そして、
笑った。
その笑った時の瞳が、
大きな瞳をくしゃっとさせて笑うそのかわいい笑顔が、
あぁ…やっぱり祥太なんだ……と、
思わせた。
「あ、ばあちゃんは先に下りてるな。
祥太、優衣を頼むな」
おばあちゃんがそう言うと、
祥太は体を起こした。
「わかった」
あ………声が全然違う。
かすれた声だったのに、
低音の優しい声になった……
おばあちゃんは、ゆっくりと下り始めた。
そして、
石段で向き合ったまま、
祥太と二人きりになった。