「約束」涙の君を【完】
少しひんやりとした風が、
二人の間を吹き抜けて、
祥太の髪を揺らした。
祥太は、ふわふわとした髪をかいて、
またズボンのポケットに手を入れた。
沈黙の中、木の葉の揺れる音だけが響いていた。
なんか、緊張する……
顔を上げていられなくなって、
下を向いた。
祥太がまた一段上ってきて、
もう、目の前まできたから、
さらに下を向いた。
ものすごい早さで心臓が動きだし、
このドキドキが、発作の前触れなのか、
祥太にドキドキしているのか、
わからないけど、
とにかく苦しくなってしまって、
胸を抑えた。
「全部、じいちゃんから聞いたから」
優しい声に、顔を上げると、
祥太は、真剣な顔をしていた。
やっぱり全部、
知ってしまったんだ…
私はまた、
下を向いた。
息が苦しい……
「優衣」
優しく、低い声で呼ばれて、
また、顔を上げた。
「優衣は、優衣だろ」