「約束」涙の君を【完】
初恋
次の日、
お昼ご飯を食べた後、
私はまた、神社に行くことにした。
「おじいちゃん、あの裏山の神社、
すっごく素敵な所だね。
昨日、おばあちゃんに教えてもらったんだけど、
すっごく気に入っちゃった。
また、今から行ってくるね」
すこし古ぼけたマッサージチェアで、ブルブルしながら、
おじいちゃんが笑った。
「ああ。行ってこい。じいちゃんもあの神社は好きだ」
宇宙人みたいな声で、おじいちゃんが言ったから、
思わず笑ってしまった。
「じゃ、いってきます!」
私は縁側で靴を履いて、つま先をトントンとすると、
昨日教えてもらった裏山の入口へと向かった。
入口から入ると、やっぱりあった、緑のトンネル、
まっすぐ伸びた石段。
「よし!」
私は、昨日よりも少し早足で、神社へと石段を上っていった。
はあ、はあ、はあ....
結構、きついな...
途中で一休みしてまた上って。
昨日よりも早く神社にたどり着いた。
そしてまた不思議な音がする鈴を鳴らして、手を合わせた。
「お母さんが、元気になりますように。
お兄ちゃんに、友達ができますように。
お父さんが帰ってきますように。
あと...
おばあちゃんとおじいちゃんが長生きしますように」
本当は、もっと願いたい事があったけど、
欲張りすぎている気がしてやめた。
ゆっくりと目を開けると、一礼してすぐそばにあるベンチに座った。
お母さんのこと、
お兄ちゃんのこと、
お父さんのこと……
家族の事を思うと、
辛くなる。
考えてみれば、
お母さんが元気だとか、
お兄ちゃんに友達ができるとか、
お父さんが家に帰ってくるとかって、
他の人にとっては、
ごく普通のことだ。
そうか、私はただ、
普通に暮らしたいだけなんだ。