「約束」涙の君を【完】
こんなに泣いているのに、
不思議と息苦しさが、
落ち着いていくような感覚がした。
ずっと頭を撫でられ、
それが、とても心地よくて、
自然と涙もおさまってきた。
両手から顔を出すと、
祥太は笑って、
私の前髪をくしゃくしゃっとした。
「下りれるか?」
首を傾げて聞いてきた祥太に、
私はゆっくりと頷いた。
祥太はまたズボンのポケットに手を入れて、
一段下りた。
私も一段下りて、
祥太の後ろのワイシャツを掴んだ。
「ん?」と祥太が振り返ったから、
恥ずかしくなってバッと手を離すと、
祥太はゆっくりと私の隣まで上ってきた。
隣に並ぶと、
すごく背の高さを感じた。
祥太は私の手を繋いできた。
大きくて、温かい……
そして、自分の髪をくしゃくしゃっとして、
「行くか」とつぶやいた。
ゆっくりと一段一段、
手を繋いで一緒に下りた。
ちらっちらっと上目で祥太を覗くと、
時々目が合って、
その綺麗な横顔に、
胸が苦しくなった。
違う、苦しいんじゃない。
胸が、きゅんってするんだ。
発作の前触れとは違う。
私は祥太に、
ドキドキしているんだ。