「約束」涙の君を【完】
その白いボードは、磁石のペンで書く、磁気ボードだった。
「これなら、何回でも書けるし、手が汚れないし、
濡れても書けるから、
こういう雨の日でも外で書けると思ったんだ」
祥太は、磁気ボードにぐるぐるっと磁石のペンで書いた。
そして、ペンの側面についた磁石で、
ボードの裏面をこすると、
ぐるぐると書いた文字が消えた。
祥太は私にペンとボードを差し出してきた。
そっと受け取ると、
私はボードに書いてみた。
【ありがとう】
祥太は隣からボードを覗き込んだ。
そして私の顔を見て、笑った。
「話したいこと、なんでも書きな。
どんなことでもいい。
俺、全部読むから」
祥太……
なんでそんなに優しいんだろう……
私は、裏面をこすって文字を消し、
もう一度書いた。
【優しくしてくれてありがとう】
祥太はまた覗き込んだ。
そして、笑いながら私の頭をポンポンと撫でた。
「今度は俺が、
優衣を支えるから」
え……
今度……?
その言葉の意味がよくわからなかったけど、
隣から頭を撫でられて、
もう少しこうしていたいと思ってしまったから、
このまま、
このままって……
何も動けなくなってしまった。