「約束」涙の君を【完】
梅雨が明けた。
祥太は、あれからも毎日学校帰りにうちに寄ってくれた。
夕方近くになると、ひょっこり庭先に現れて、
縁側に座って少し話して、
すぐに帰っていった。
毎日祥太が来る時間が楽しみで仕方なかった。
今日は金曜日。
縁側で待っていたんだけど、
待ちきれなくて、
庭先まで出てきてしまった。
見渡しても田畑ばかりで、
祥太の姿は見えなかった。
……今日は遅いな。
あぜ道をゆっくりと歩きだし、家からどんどん離れても、
やっぱり祥太の姿は見えなかった。
今日は来てくれないのかも……
そう不安になりかけたその時、
遠くに自転車が見えた。
祥太かな……
立ち止まって自転車を眺めていると、
やっぱり祥太だった。
祥太は私の姿を見つけると、
ペダルを強くこぎ始めた。
そして、私の横でキキーとブレーキをかけて止まった。
「なにしてんの?」
自転車のハンドルに腕を乗せて、
下から私の顔を覗き込んできた。
優しい眼差しに、前髪がかかっていて、
今日は横の髪を少し耳にかけていた。
その姿にキュンとしちゃって……
えっと…えっと……
祥太を待っていたんだよ。
早く会いたかったんだよって…
声が出てくれれば………
「はぁ…」
「わかった」
祥太は、私が息を出したところですぐに言葉を遮った。
「どっか出かけるところ?」
予想外の答えに私は思いっきり首を振った。
「じゃあ…畑のばあちゃんを呼びにいくところ」
また私は首を振った。
「じいちゃんか」
さらに首を振った。
「俺を……待ってた?」