「約束」涙の君を【完】
金曜日の放課後
「結城、ちょっと……」
帰りの準備をしていた俺を、
担任が呼び止めた。
俺が教卓まで行くと、
「ちょっと、残れ。聞きたいことがあるから」
聞きたいこと?
「わかりました」
何のことだかよくわからないけど、
俺は自分の席に戻って、椅子にまた座った。
「どうした?祥太?
帰らねーの?」
親友の麻生 賢人(あそう けんと)が前の席にドカッと座ってきた。
賢人とは、小6の2学期から親友になった。
優衣に励まされて、
思い切って声をかけたのが、
賢人だった。
それからの親友だから、
賢人のことはなんでもわかるし、
賢人も俺のことはなんでも知っている。
「あぁ、なんか先生が話があるからって」
賢人は、あぁーっと残念そうな顔をした。
「せっかく彼女に会いに行くのにな」
残念そうな顔をしたかと思ったら、
今度は、ハハハッと笑い出した。
賢人、声がでかいよ……
「え!彼女?結城くん、彼女いるの?」
一人の女子が、賢人よりももっと大きな声で言って、
気づくと、俺の席に女子がたまってきてしまっていた。
結城くんに彼女?
うちの学校?他校?
結城くんに彼女がいるなんてやだ…
だから結城くんに告白した子、みんな振られていたんだ……
いろんな声が聞こえてきた。
なんなんだよ……
「あああ〜悪りぃ!
なんでもない!なんでもない!
帰れ、帰れ!」
賢人は立ち上がって、女子たちを追い払った。
高校に入って茶髪にした賢人。
元々、軽いノリの奴だったけど、
さらにチャラく見えるようになってしまった。
「結城くん、彼女いるの?」
一人の女子に真剣な顔で詰め寄られて、
ちょっと引いてしまった。
「ほら、帰れって。
ごめんな、祥太。
じゃあ、またな!
ほら、帰れって!」
賢人が、女子たちを連れて教室を出て行ってくれた。
ほとんどが帰った時、先生がさっきまで賢人が座っていた席に座ってきた。