「約束」涙の君を【完】
ふと暗くなり、
上を見上げると、
木々の合間から見えるのは、
さっきまで見ていた青空ではなく、
灰色の空だった。
その時、低い音がかすかに聞こえた。
.....雷?
私は急いで立ち上がって石段の方へと走った。
その時、でこぼこした木の根っこにつまずいて、
思いっきり転んでしまった。
.....あっ!!!
転んだ先に小石があって、
それに思いっきり膝をぶつけてしまった。
「いったぁ.....」
どんどん血が出てきてしまったけど、
手ぶらで来たから、抑えようがない。
なんだかさらに暗くなってきた。
急いで出血したまま立ち上がってみると、
思った以上に膝が痛い。
片足引きずりながら、
ゆっくりと石段を下り始めた。
古びた手すりがあったことが唯一の救いだった。
ゆっくりゆっくりと手すりにつかまりながら下りて、
真ん中ぐらいにたどり着いた時、
一つ下の段にもじょもじょ動くものが.....
「ぎゃああああああ!!!!!」
私の一番苦手なセミが、
石段の上でひっくり返って足をもじょもじょと動かしていた。
しかも、2匹も。
....なんでこんな時に。
この段を飛ばして次の段にいくのも、
この足では無理....
苦手なセミが石段でふんぞり返っているせいで、
動けなくなってしまったその時、
大きな雷の音に、思わず石段にしゃがみこんだ。
目の前にセミ2匹。
流血中の痛む膝。
「もう、やだ...」
しゃがみこんだまま、顔を両手で覆った。
「お前...何やってんだ?」