キミの秘密
「空いてる部屋ねぇ…
ないことはないんだけども…」
「本当ですか!?」
私が合格したのは、中学からのエスカレーター式の進学校。
入学する直前に両親の海外赴任が決まり、一人だと心配だと言う理由から、入寮できなければせっかく合格した高校も諦めなければならない。
だからどうしても寮に入りたかった。
「お願いします!
私、どうしてもここに入りたいんです!」
「うーん…
あっ、祠堂さん!
確か祠堂さんは相部屋でなかったわよね?」
“祠堂さん”?
寮長のおばさんが私の後ろに誰かを見つけたらしい。
すぐ後ろから鈴のような声が聞こえた。
「はい。
私の部屋は、今は私だけですよ」
花の匂い…?
なんだっけ、この花。
そう考えながら振り返ると、後ろにはモデルのようなかわいらしい子が立っていた。
金色の巻き髪に、日本人離れした綺麗に整った顔…ハーフかな?
思わずじっと見てしまうと、その女の子が私を見た。
目が合った瞬間、にこっと微笑まれて、同性でありながらもドキッとした。
「祠堂さんの部屋に、この子入れてくれないかねぇ。
他はもう全部満員で…」
「私の部屋に、ですか…?」
一瞬困る仕草を見せたように見えたが、祠堂さんはすぐに微笑んだ。
「いいですよ」
彼女は天使だと思った。