キミの秘密
「…卑怯だよ」
「あ?」
「お、お金で脅すなんて卑怯だよ!
私は絶対出て行かない…!」
「お前、このこと黙れるか?」
「…なんでよ」
「見逃してやるって言ってんだよ」
「は…?」
状況がよく分からないんですけど…
「このことを黙るなら、この部屋にいてもいい。
口外したら、分かるよな?」
「誰が男と相部屋なんて!」
「お前みたいな女なんか興味ねぇよ。
俺には後一年ここを出るわけにいかねぇんだ。
自分を危険にさらすかよ」
「………っ」
とても嘘をついているような表情には見えない。
でも、相手は男。
しかも、お金持ち。
二つの意味で敵にしては危険すぎる。
「どうする?
俺と取引するか?」
「…信じられない」
「じゃあ、さっそと出てー…」
「何事ですの」
えっ…
静かにドアが開けられ、恐る恐る目線を動かすと、無表情の女の子が立っていた。
今の状況からして、私は押し倒されてるわけで。
しかも相手は外見女の子の中身男の子なわけで。
これはちょっとやばい状況なんじゃ…
あ、でももしかしたらこれで正体をばらしちゃえば!
「あ、あの、助け…」
「全く、厄介な人ですね」
口から出た言葉は特に驚きの色もなく、ただ静かに吐き捨てられるように発された。