君に恋した
私は、そんな彼の一面が好きだと思う。
一面というものでもない、ただその表情が愛しいと思う。
「ちょっと、じゃないでしょ? あれだけ好きなもの並べて叫んでたんだから」
「ちぇ、聞かれてたか」
ちっとも残念そうではない、寧ろ嬉しそうな声だった。
「博愛主義者は大変ですね、すべて平等に、だもんね」
言いながら、鞄を取って中身をチェックする。
別に入れるものはないことを確認すると、サッとチャックを閉めて肩に掛ける。
「平等に、ねぇ。難しくて叶わない……って、もう帰るの?」
「うん、用事ないし」
けろり返すと、そんなこと言わずにあと少しだけ付き合ってよ、と言われた。