君に恋した
まぁ、そんなたかが嫌味が彼にとっては大切なのだろうし、そういう彼の事が好きなのは相変わらずなのだけれど。
「はいはい、じゃ、理由は聞いたから私は帰るね」
「ちょ、たんまっ! お願いがあって待ってたんだけど」
彼の焦りが本格的になる。
よほどの事がない限り、焦りをみせないあの王子が、だ。
ついキョトンとして聞いてしまう。
私は奴に甘いのかな。
「あー、と。一度だけ、名前借りてもいい?」
「は・い?」
眉を寄せ、目も細めてもう一度聞き直す。
今、なんと?
「だーかーらー、一度だけ。累(ルイ)の名前で叫ばせてよ」
照れながら言う彼の、表情は揺れても瞳は揺れなかった。
反らしてはいるものの、揺るがなかった。
「……いー、よ」
本当は、誰に叫びたい“スキ”なんだろう。
なんてそんなことを思いながら、返事をした。