君に恋した
本当に言うのは恥ずかしいし、本番だけでいいから、適当な名前をあげたかったのだろう。
けれど、みんなの王子故に憚れてこうして幼馴染みに借りるしか手段がなかったのだ。
そんなお遊びで、呼んで欲しくはないけれど、一度くらい、言ってもらいたかったのかなぁ…なんて、思う自分も居たり居なかったり。
彼の方は目をまるくして、ポカンと口を開けている。
ああ、なんとマヌケな顔をしているんだろう。
「気が変わる前に言っちゃってよね、」
「え、ああっ、心の準備が」
「あと十秒ー」
我に返った彼はどこをみるともなく、私の正面に立ち直した。
ちらちらと様子を伺われているので、そろそろカウントダウンを始めることにする。