君に恋した
 

 音に驚いて、雑誌から顔を上げる。
 吊り上がった眉のすぐ下の目は怒気をはらんでいた。唇は彼女が強く噛み締めているせいで血の気が失せていたし、その唇からどんな言葉が漏れてくるのかと、息を飲んで待った。

 けれど言葉はなかなか出てこないので、声をかける。


「…はる?」


 ぴくりと目元の筋肉が動くと、パチパチと瞬きを数回、それからもう一度唇を噛み締め直し息をゆっくりと吸うのが、肩の動きでわかった。


「私、そんなに色気ない?」


 突然何を言い出すのかと慌てて目を泳がせる。

 どうしてそんなことを、彼女は自ら口にしなければならなかったのかを思う。

 
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