君に恋した
 

 付き合い始めた頃だって今だって、彼女に色気を感じなかった訳ではない。と、心の中で正直に言ってみる。


「そんなに、欲情できないかな」


 彼女の目元がじわじわと赤みを持ち、潤み始める。
 肩が小刻みに震える。

 やめろ、やめてくれ。
 せっかく今まで堪えてきたのに。

 奥歯に力を入れて強く噛み締める。


「柳くんは、そういうのに興味ない人?」
「…興味、あればいいわけ?」


 漸く声が出せたかと思えば、ついそんな素っ気ない言い方をするのは、彼女が大切だから。

 冷たく聞こえちゃうとは思うけどね。

 
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