恋はストロングスタイル
俺は、マットの上に、頭部を強打した。
脳が揺れた。
ふらつきながら、どうにかゆっくりと立ち上がる。
田山がいない。
どこに行った?
「ミサイルキックだ」
後ろから声がした。
振り向いた。
両足の裏が、眼前に迫ってきていた。
位置が高い。
田山は、リングコーナーの柱に上がり、そこからジャンプしてドロップキックを放ったのだ。
喰らった。
吹っ飛ばされた。
マットに後頭部をまた強打し、さらに脳が揺れた。
ぐわんぐわんと頭痛が反響する。
視界がぐにゃぐにゃに歪んでいた。
どちらが上で、どちらが下か。
やばい。
とりあえず距離をとらねば。
しかし、どっちへ向かえばいいのか?
おれはリング上を腹ばいになって這った。
すると、尻になにか重いものが落ちてきた。
田山だ。
田山が、俺の尻の上に乗ったのだ。
足を掴まれたのがわかった。
田山は、自分の足を俺の足に、奇妙な形にからませた。
そして、呟いた。
「最後だ。…………スコーピオン・デス・ロック」