恋はストロングスタイル


「健介君っ!」私は叫んでいました。「お願いっ!負けないでっ!健介君っ!」






私は一体何を言っているのでしょうか?健介君は足の骨を折っているのです。戦えるはずがありません。


分かってます。
分かっているのです。
でも、嫌なのです。


健介君が好きなのです。
健介君が、大好きなのです。
健介君と別れたくありません。
もっといろんな場所に行きたい。
もっといろんなことをしたい。
もっと二人で過ごしたい。健介君と一緒にいたい。


私は泣きながら叫びました。
「立ってっ!健介君っ!!」


しかし審判のカウントは無情にも続きます。


「7っ!8っ!……」


……あと二秒です。


私は顔を覆ってうずくまりました。



そのときです。



会場にざわめきが広がりました。



「9っ!………………」



カウントが、止まりました。



私は、目を開けて、ゆっくりと顔をあげました。



目を見開きました。














リングの上で、健介君が、ぼろぼろの体で立ち上がっていました。















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