受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 俺はやっと望月一馬から受けた洗礼の意味を理解した。


牧師の免許を持つ一馬は、まず俺をキリスト教に触れさせたかったのだ。


有事対策頭脳集団の入団ではなかったらしい。
俺はそれだけでホッとしていた。


まことと一緒なら……

まことと一緒だから、俺は強くなれるような気がした。

全てまことが導いてくれた愛の奇跡だったのだ。




 目の前にまことがいる。
あんなに恋い焦がれた恋愛シミュレーションゲームの相手がいる。


今すぐ抱きたい。
抱き締めたい。
でも俺の五感が反応する。
まことを描きたいと燃え上がる。


俺はいてもたってもいられなくなった。


俺はまことをお姫様抱っこして部屋を後にした。
行き先は決まっている。


それは俺の夢の中で、幾度も幾度も叩きのめされた白い部屋。


『ママー、ママー』
何度も何度もさ迷い続けた悪夢の中だった。

俺はただまことに、其処から救い出してほしかったんだ。




 俺達はさっき結婚式を挙げたばかりのあの白い部屋にいた。
個展用に準備した大カンバス。
その上で愛し合う。


今まで抑えてきた感情が新たな愛情を誘発する。
俺は貪欲な亡者になっていた。


俺の五感とも言えない何か、第六感とも言えない何かが爆発する。
俺はその感情のままで突き進む。

小道具は要らない。
俺達は体の全てをカンバスにぶつけた。


二つの肉体と精神が融合した時、その作品は完成した。


タイトルは初夜だった。


それはクリスマスプレゼントとして、まことが俺にくれた愛そのものだった。



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