受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 眞樹の家の傍に一度だけ行ったことがある。


眞樹の家は、俺の買った携帯ショップの上で三階建てだった。


だから安かったんだ。


父親が其処のオーナーで、眞樹のために上で塾も経営していると聞いた時は本当に驚いた。


不登校児のためのフリースクールって物も作ったと言っていた。


流石に眞樹の父親は違う! と思った。


そうなんだ。
だから眞樹は一番になれたのか。


息子や地域学習のために頑張っている人だと、俺はその時思ったんだ。


俺は本当に知らなかったんだ。
その三階があの白い部屋だったなんて。


あの二階にある、二段ベッドを見ていながら気が付かなかったなんて……




 眞樹は今でも俺の命を狙っている。

だから、本当のことなど言えるはずがない。


まして……
実験材料として生まれて来た本当の兄弟を抹殺したかったなどと言えなかったのだ。

だから日本一の頭脳を持つとされる自分に賭けたのだ。


二人は仕切られた席にいた。

お互いの答えが見えないようにするための配慮だった。


直ぐに答え合わせが出来るように、問題を製作した幹部達も近くで待機していた。

眞樹と松本君の解答だとされる用紙は直ぐに分析された。


自分の力を誇示したくて試験を企画した眞樹。

でも結局眞樹は負けた。
それは俺の無意識に出た行動が原因だった。
俺は自分でも気付かないうちに問題を作成した人の意識の中に入り込んで、ベストアンサーを盗み出していたのだった。


小松成美が身に付けた意識飛ばし。
俺は更にその上を行く。


孤独故になった夢遊病。
瞬間移動。

開花した時、俺は生きる凶器になっていたのだった。


孤独の果てに俺が見つけ出したもの。
それは、怪物になった自分の本当の姿だった。


氷室博士教授の最終目的はこれだったのだ。




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